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上海万博記念版画展


上海万博会場の万科グループパビリオンにて開催された記者会見の模様

上海万博会場の記者会見にて。左からアーティストの曲豊国さん、孫良さん、裴晶さん、実行委員の朱其さん、山口裕美、実行委員長の洪欣さん、中原佑介先生、セイクレストの青木社長、趙力さん

東京で開催された記者会見の模様
上海万博記念版画展ポスター
上海万博記念版画展ポスター

上海万国博覧会記念版画制作について

このプロジェクトは、中国で初めて開催された上海万国博覧会の記念の公益事業として企画され、版画の売上金を元に、美術専攻の学生の奨学金制度とアーティスト・イン・レジデンス建築のための「アジア芸術教育基金」を設立することを目的にしています。
この趣旨に賛同し、参加いただいたアーティストはこちらです。

(敬称略、順不同)

方力钧 Fang Lijun
李大纯 Ji Dachun
刘野 Liu Ye
裴晶 Pei Jing
曲丰國 Qu Fengguo
孙良 Sun Liang
周春芽 Zhou Chunya
草間彌生 Kusama Yayoi
横尾忠則 Yokoo Tadanori
関根伸夫 Sekine Nobuo
小清水漸 Koshimizu Susumu
井口真吾 Iguchi Shingo
笛田亜希 Fueda Aki

大変豪華な13名のアーティストが揃い、30点の版画が完成いたしました。
実行委員会では、これらの作品の巡回展を行い、広く多くの方々に購入をお願いしています。ぜひ興味のある方は、上海万国博覧会記念版画制作実行委員会事務局にお問い合わせください。

上海万国博覧会記念版画制作事務局(Shun art gallery内)
gallery@shunartdesign.com
http://www.shunartdesign.com/

実行委員会メンバーはこちら。(敬称略、順不同)

趙力    (キュレーター、2009年ヴェネチアビエンナーレ中国館ディレクター、北京中央美術学院教授)

朱其    (美術評論家、798ビエンナーレディレクター)

中原佑介  (美術評論家、前兵庫県立美術館館長)

山口裕美  (アートプロデューサー)

洪欣    (上海万国博覧会記念版画制作実行委員会・委員長、 Shun art gallery ディレクター)

 

東京展の情報はこちら(展示は終了しています)


日中の架け橋、アジアの架け橋
「上海万国博覧会記念版画制作について」 

山口裕美(アートプロデューサー)

長年、現代アートの現場を見てきた私だが、この数年、沢山の注目すべきアーティストが登場しているのが中国である。その躍進のスピードには驚くべきものがあって、ヴェネチアビエンナーレやドクメンタのような大規模国際展で見た作品が、すぐにヨーロッパやアメリカのギャラリーに並ぶようになっていた。さらにオークションに登場すると、最高額の記録を塗り替えていったし、北京の798、上海のM50などのニュースは美術雑誌の大きな話題であった。 

今回、上海万国博覧会記念版画制作委員になったおかげで、中国の素晴らしい現代アーティスト達にインタビューする、という機会に恵まれた。北京でお会いした方力鈞さん、劉野さんから始まって、上海でアトリエ訪問させていただいた孫良さん、裴晶さん、曲豊国さんら、独自の個性と才能のあるアーティスト達にお会いしてきた。まず印象的だったのは、どのアーティストの方もアトリエに到着すると、まずはお茶をふるまってくださったこと。初対面の緊張感がほぐれ、中国茶の馥郁たる香りが漂い、リラックスした中でインタビューが行われた。

方力鈞さんは中国の現代アート界を代表する画家で「シニカルリアリズムの旗手」と呼ばれているが、実際はトップランナーとしての喜びと苦悩を抱えている繊細な創造者というのが私の印象だ。華やかな色使いの中にも生と死が作品の中に垣間見える。

劉野さんはユーモアのセンスのあるジェントルマンで、現代に生きる女性の持つ孤独やたくましさを愛らしく表現している。今年の春の香港オークションで、2年ぶりの高額落札となったのが、劉野氏の「ブライド・ロード」という作品で1910万香港ドル(約2億3000万円)で落札された。
孫良さんは、俳優のようなダンディな物腰とは裏腹に、幻想的でエロティックなシュールレアリズム的絵画作品を描く。見ていると引き込まれ、登場するモチーフを解読したい衝動に駆られる。魅惑的な作品なのだ。
裴晶さんは、必ず本人が登場するという現代的な作風で知られる。ときどきエロティックなモチーフも描く。しかしそういう時にも、過去の演劇や映画の構図を使い、知的なユーモアを忍び込ませている。おそらく多くの観客は、彼の作品の前では素になり、笑顔になるのではないだろうか。

曲豊国さんは、時間を扱っているコンセプチャルな画家。お話を伺いながら日本人のインスタレーションアーティスト宮島達男との共通点を感じた。感情的なもの、印象主義的なものを排除して、淡々とした描き方で仕上げている絵画なのに、とても深く感情に突き刺さるものがある。「世界」と題されたシリーズには下絵に世界地図のような絵柄が隠されているが、どのエリアに住む人にも同じ1時間、1分、1秒があることを彼の絵を見ていると深く読めるのである。周春芽さんにはこれからインタビューすることになっている。とても楽しみだ。

現代アートは問いかけであって答えではない。見る人、それぞれにいろいろな問いかけを投げてくる作品が良い作品だ。今回の上海万国博覧会記念版画が1人でも多くの方のお手元に届き、毎日作品に触れることで、アートのある暮らしがとても充実していくことになると思うと、このプロジェクトに参加したことを大きな誇りに思える。

上海万国博覧会記念版画制作は「アジア芸術教育基金会」を設立する目的で委員会が組織された。私に声をかけてくださったのは委員長の洪欣さんである。彼女の話を伺って、その目的に共感し、自分の出来ることをお手伝いすることに決めた。アートを学ぶために留学する学生は希望に胸を膨らませて留学をする。しかし、留学した先ではさまざまなことが起こる。そうした時に相談する窓口が今はないのだ。彼女が苦労に直面する芸術を学ぶ留学生のための教育基金を作ると語った時、私は語学堪能な彼女がいろいろな場所でそうした場面を目撃してきたのだろうと思った。せっかくの留学が果たせても、本当の意味でのチャンスが巡ってきた時に、支援がなくて実現出来ないケースがある。そして、ほんの少しの支援があれば、上手くいくケースが多い。誰よりもそのことを知っている洪欣さんが奔走した末に、今がある。

上海万国博覧会という大きな文化イベントをきっかけに、「アジア芸術教育基金会」が出来ることは、とても大きな始まりの一歩であると思う。中国を中心とした社会貢献の成功例が始まるのである。さらに、そうした目的に賛同してくださったアーティストの顔ぶれが文句なく素晴らしい。上海万国博覧会が終了しても、Better Lifeの意志を引き継ぐこのプロジェクトは必ず多くの人々を感動させて成功するに違いない。

(中国2010上海万博局発行「2010上海EXPO」11月号より)