プロデュース

掛川現代アートプロジェクトとは: 

 掛川城の隣にある二の丸美術館と二の丸茶室を会場に「記憶に残す現代アート体験」を実現するために、現代アーティストをゲストに迎え、お茶会に使える道具を1つ、職人的な技を持つ方とコラボレーションして、作っていただくプロジェクト。

 7つ道具の完成形がどういうものになるかはまだひみつ。最終的にはその7つ道具を携えて、全国の美術館や博物館でお茶を楽しみながらの展覧会を行う予定。お茶道具はすべてポータブルであり、茶会では一期一会を創出し、なにしろ美味しいお茶を飲めるという素晴らしい日本独特の「アートイベント」だ。もちろん、素人にはわからない最終芸術でもあって、亭主と主客の関係や真の意味でのおもてなしの意味など、興味が尽きない。友よ、日日、勉強あるのみ!根性で精進しよう!!

 

ミヤケマイ・トークショー:温故知新−伝統ある掛川と新しいアートとの出会い -

ミヤケマイ展チラシ【データ】
主催:掛川市現代美術研究会
会期:2008年2月3日
会場:「ミヤケマイトークショー」(大日本報徳社大講堂)
「夜の美術館と現代アート茶会ー夜咄編―」(二の丸美術館と茶室)
アーティスト:ミヤケマイ
企画・プロデュース:山口裕美

ミヤケマイトークショー ミヤケマイトークショー ミヤケマイトークショー

ミヤケマイのトークショー(この写真のタイトルとして「女将と仲居」とミヤケマイが名付けましたが、仲居さん風に見えるミヤケマイオリジナルの着物はアリとコンデンスミルク柄の帯、そしてイチゴ刺繍の一つ紋という素敵なもの)

夜の美術館と現代アート茶会 ―夜咄編―

 

夜の美術館と現代アート茶会
夜の二の丸美術館の作品を
LED懐中電灯で詳細に眺める参加者
夜の美術館と現代アート茶会
ひとつひとつの作品を自分の 懐中電灯で
眺めていくと丁寧な時間が流れる
夜の美術館と現代アート茶会
節分なのではっぴを羽織って
真剣に鑑賞中の山口裕美
夜の美術館と現代アート茶会
ミヤケマイの作品「はじまり、始まり」の
掛川市二の丸美術館へ寄託式の記念撮影
夜の美術館と現代アート茶会
夜の茶会の様子
(左からミヤケマイ、山口裕美)
夜の美術館と現代アート茶会
夜の茶会の小間に飾られたミヤケマイの
掛け軸「初まり、始まり」

 

「掛川での出来事 パート1」  

掛川にある現代美術研究会からレクチャーの依頼を受けたのは、随分前だったような気がしているが、きっかけは私の本「現代アート入門の入門」だった。現在、三刷目に入った光文社新書の本は、本当にいろいろな人々との出会いを作ってくれたが、掛川市の皆さんと出会うことが出来たのもあの本のおかげである。(作る過程で罵声を浴びせあった編集者の小松さんは今や戦友だ。小松さん、心から感謝です!)

掛川市現代美術研究会の会長は、掛川市駅前の呉服屋さん「大国屋」のおかみさんである山本和子さん。またメンバーの皆さんはそれぞれに個性的だが、皆、素敵な人ばかりで、お酒好きという共通点もあって懇親会で意気投合、今では第二の故郷のような気持ちがしている。
そしてチャーミング笑顔で私に難題を出してきたのが山本さんだった。「現代アートで街を、掛川駅前から掛川城、そして二の丸美術館を元気にできませんか?」ということだった。実はこの話、偶然、いろいろなことが重なっている。というのは、私は2,3年前から「現代アートを海外に押し出してゆくには、歴史的背景をきちんと説明する必要がある。もしかしたら、神道にその大きな背骨があるのはないか」ということが頭に浮んでいて、代々木の神社本庁へ神道のことを教えていただきに、何度か足を運んでいるところだったからだ。そして、レクチャーの帰り道「事任神社に行ってみますか?枕草子に登場する由緒正しい神社ですよ」と誘われた。その時の参拝、ご神木の凄さ、そして月にかかる雲、それから神社に伝わる大事な掛け軸を拝見したあの日のことは決して忘れない。事任神社は昔の作りを残した素晴らしい神社だったことを書いておく。(正式名称は「ことのままじんぐう」ですが、通称、ことのままじんじゃ、と呼ばれています)
そしてもう1つ。日本の歴史本を乱読しながら「ああ、私は着物の1つも着られないまま、死んでしまうのか。日本人としてあまりに情けない。とほほ。」急に情けなさが込み上げて、着付け教室に通いはじめたところに、呉服屋のおかみさんと知り合い、着物のいろはを教えていただける大事な人が見つかった。つまり神道の和の文化についての歯車がぴたっと合った瞬間だった。今でも私は掛川に呼ばれたのではないか、とさえ思っている。
そして二の丸美術館へ行き、そのコレクションの素晴らしさに驚愕する。決して大きな美術館ではないけれど、目利きの人が収集したクオリティーがあり、江戸時代中期から末期にかけての煙草道具や帯留めなど、職人さんの細工が楽しいコレクションを知ることになった。ちなみに、日本全国を巡回している和の達人、池田重子さんの店「古代布 池田」は引っ越しした事務所の近くにあるので、日々、勉強中だ。

 そこで、アイデアを出した。2フロアの二の丸美術館を、時間をかけて見る方法として、夜、照明を落としてLEDの懐中電灯で鑑賞する方法だ。今は、非常に精巧な懐中電灯があって、コレクション作品を傷めることが極力さけられる。また、二の丸美術館のとなりには、二の丸茶室があり、鑑賞後の気持ちのたかぶりを、一杯のお茶がおさめてくれるのではないか、と思った。言うまでもなく、掛川はお茶処。茶道の知識はまったくなかったが、茶室の面白さ、お茶の味はわかるつもりで、僭越を承知で山本さんに「では、夜の美術館とアート茶会をしましょう。それも夜咄で!」というと、もちろん茶道も嗜む山本さんが「夜咄って、大変なこと!!」とおっしゃるのは当然だったが、説得したのである。
これは私のイイカゲンな不良精神によるものだが、アートと名前が付ければ、表現の自由は保障されるはず、との思いからだった。今、思うと、あまりにも大胆な思いつきだったが、それを許して、楽しんでくださる懐の深さが掛川現代美術研究会の面々にあったことが大きなポイントだった。
それから、なんどか夜の美術館や茶室での方法を実験し、リハーサルを繰り返し、いよいよ実施されたのが、2008年2月2日&3日の「第一回夜の美術館と現代アート茶会」なのである。初回のゲストとしてこの人しかいない、と選んだアーティストはミヤケマイさん。彼女は、着物の先生であり、茶道もシニアクラスで勉強中、そして作品は太鼓判というアーティストだ。最近では、二冊目の作品集も発売になり、この夏は大きな個展が全国の高島屋を巡回した。ミヤケさんが掛川のために制作してくださったのは、掛け軸「初まり、始まり」。掛川のお祭りの時の大きな獅子頭が登場するもので、軸先は地元に窯を持つ陶芸家の竹廣泰介先生が作ってくださった。これで素晴らしいコラボレーション作品が完成した。
ついでにトークショーの時に、頭の中にあった爆弾発言をしてみた。「私はこれから7年かけて、掛川の未来の財産となるようなお茶のためのアーティストの7つ道具をプロデュースしたいと密かに思っています」と。それで、実は来年もこの「夜の美術館と現代アート茶会」が開催されることになったのである。う〜〜〜む。
と、ここまでボケボケの頭で書いてきたが、ことはそう簡単ではなく、現代美術研究会と二の丸美術館の皆さまにはたいそうな努力をしていただき、このプロジェクトが動いているのは間違いない。でもどんなに大変な仕事でもメンバーが良いと楽しい仕事になるのであ〜る。2009年のゲストアーティストは中村ケンゴさん。そしてコラボレーションをお願いしたのはアクリルデザイナーの俵藤ひでとさん。このキャスティングだけで、私は「ワハハ!」と大成功のシーンが見えているのである。 (掛川での出来事 パート1終わり)